波除稲荷神社

 築地市場海幸橋門付近で、「波除稲荷神社」(東京都中央区)がありました。

波除稲荷神社

所在地 中央区築地六丁目二〇番三七号

 波除稲荷神社の創建は万治年間(1658~1661)と伝えられています。築地一帯の埋立てが進められた万治年間、波浪により工事が難航を極めた際、海中に漂う稲荷明神の像を祀ったところ波浪が治まり、埋立て工事が無事完了したと言われています。「波除」という尊称はこの故事に由来するもので、江戸時代以来、航海安全や災難除け・厄除けなどの神として人々に篤く信仰されてきました。
 波除稲荷神社の祭りは、江戸時代から獅子祭りとして知られ、祭りの際には加須多くの獅子頭が町をねり歩きました。獅子頭の多くは震災・戦災などで失われましたが、現存する嘉永元年(1848)製作の獅子頭一対(中央区民文化財)は社宝として本殿に安置されています。なお、現在でも毎年6月の「つきじ獅子祭」では、「厄除け天井大獅子」や「弁財天お歯黒獅子」が巡行されることがあり、獅子祭りの伝統を伝えています。
 また、本殿前にある天水鉢二基(中央区民文化財)は、尾張藩船からの積荷の陸揚げに従事した小揚たちが天保9年(1838)に奉納したものです。江戸時代、現在の築地市場の南半分には尾張徳川家の蔵屋敷があり、米穀や尾張の特産品などが運び込まれていました。船の無事を祈って奉納したこの天水鉢は、波除稲荷神社への信仰を伝える貴重な文化財です。

平成22年3月
中央区教育委員会

(2018年2月24日現在)